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大腸がんの診断と内視鏡治療
大腸がんは罹患率・死亡率の高いがんです。しかし、ごく早い段階で発見できれば内視鏡治療できるがんでもあり、今回はその現状をご紹介します。
「大腸」ってどんな臓器?
大腸は、消化管の末端に位置する臓器となります。消化に関しては水分の吸収が主な役割です。小腸から移動してきた内容物は、大腸で水分を吸収され、おかゆのような状態から固形になります。

大腸がんの定義
大腸がんって何ですか?
(難しく言うと・・・)大腸に発生した上皮性悪性腫瘍です。
日本の大腸がんの状況
がんに罹患する人のうち、大腸がんに罹患する人の割合、さらに、大腸がんに罹患したのちに亡くなられる方の割合は男女ともに高い傾向にあります。また、年齢が上がるにつれ、大腸がんに罹患したのちに亡くなられる方の割合は高くなります。
- ・罹患率の上昇傾向
→高齢化、生活習慣の欧米化、内視鏡などの診断機器の進歩で見つけやすくなったことなどが理由だと理解できます。致し方ない状況ではあるかと思います。 - ・死亡率の高さ
→大きな問題です。早期対処等で対策していくべきだと考えられます。
大腸がんの症状
- ・早期大腸がん
→症状はほとんどありません。 - ・進行大腸がん
→出血(血便)、通過障害(便秘・嘔吐)、腹痛などの症状があります。
早期発見のため、症状がなくても検査を受けることが大切です!

大腸がんの危険因子
- ・食生活の欧米化(高脂肪・低繊維)
- ・肥満、喫煙、過度の飲酒、運動不足
- ・特殊な遺伝的疾患(家族性大腸腫瘍症・リンチ症候群)
- ・大腸がんの家族歴
- ・潰瘍性大腸炎、クローン病など

大腸がんの診断・治療
- ・大腸がんを見つけるための検査(内視鏡検査)
- ・診断を確定させるための検査(内視鏡での生検診断)
- ・治療法を決定するための検査(全身CTなど)
大腸がんの治療方法の判断モデル

大腸がんをなくすことをめざした治療(根治治療)
▶がんを残さない治療
- ・内視鏡的粘膜切除(EMR)
▶がんがある部分に注射をしてふくらませ、電気が通る輪っかで焼き切り、取り除く。

- ・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
▶EMRでは取り除くことのできないサイズのがんに対応。がんがある部分に注射をしてふくらませ、周りから囲うように切り取っていき、取り除く。

内視鏡治療はあくまで非開腹の局所治療であり、リンパ節郭清(腸壁外のリンパ組織を摘除)が不可能となります。将来的に転移を起こさない、もしくは転移の可能性が極めて低いがんが適応となります。
- ・リンパ節転移例では補助化学療法を併用
- ・肝転移例や肺転移例でも手術の適応となる場合がある
大腸がんを小さくさせる治療
▶根治治療が望めない場合の治療
- ・開始前にがん組織内の遺伝子変異を検索し、最適な薬剤を選択する。
- ・数種類の薬剤を組み合わせて用いる。
- ・標準治療として一次治療から四次・五次治療までガイドラインで示されている。
大腸がんによる症状をおさえる治療(緩和治療)
▶化学療法の導入・継続が望めない場合の治療
- ・(例)脊髄転移による歩行困難出現時、脳転移による神経症状出現時
大腸がん抑制のため、内視鏡検査の普及が重要!
▶クチコミが大切です
- ・検便で陽性ならもちろん、腹部症状が持続する場合も
- ・家族、恋人、隣人、友人、同僚、ママ友など
やってほしくないこと!
▶1度でも陽性の結果が出たら、内視鏡検査を受けるべき!
▶たとえ痔であったとしても、内視鏡検査を行い大腸がんが見つかることがある!
まとめ
1)大腸がんは罹患率・死亡率の高いがんです。
2)早期発見により根治が望めるがんの一つです。
*きわめて早期(ステージ0)であれば内視鏡治療で治せます。
*当院では積極的にESD/EMRを行っています。
3)早期発見のために検診(検便)を受けましょう。
*陽性であれば大腸内視鏡を受けましょう。