selected

SUBARU健康保険組合 太田記念病院

病院案内about

ピックアップ

太田市消防本部より依頼を受け運用しています

「ドクターカー」について

ドクターヘリと並び注目されるドクターカー。当院でも2021年11月から太田市消防本部より依頼を受け連携し運用しています。救急車との運用の違いや、運用方法、成り立ちなどについての解説をします。

当院は東毛地域で唯一の救命救急センターとして、2012年に開設されました。その後、三次救急医療機関、救命救急センターとして、「救急車を断らない。」をモットーに、積極的に救急車、救急患者の受け入れ、ドクターヘリの受け入れを行ってきました。
皆さんは「ドクターヘリ」をご存知だと思われます。ドラマ『コードブルー』で有名になりました。
では、「ドクターカー」についてはいかがでしょうか?

救急現場に医療に精通したチームが急行することの意味

重症患者において、その予後に大きく影響する因子の1つに時間があります。救急医療は時間との戦いであり、時と場所を選ばず発生する重症傷病者に対して、いかに迅速に、適切な初期治療を開始できるかが予後を大きく左右することとなります。現場活動型救急医療と位置付けられるドクターカーやドクターヘリは、傷病者発生現場へ救急医療に精通した医療チームが出向くことにより、傷病者発生から初期治療までの時間を大幅に短縮し、救急患者の良好な転帰の獲得を目指すシステムです。

ドクターカーシステムの歴史

欧米における病院前救急診療は、このドクターカーシステムと、ドクターヘリをうまく取り入れて相互に効率よく救急医療が行われており、特にドイツでは全土で15分以内に治療が開始されるように、半径50㎞圏内にヘリコプターの基地を設置して、病院前救急医療を行っており、1970年には交通事故死者が2万人を超えていたものが、この救急ヘリコプターシステム導入により、15年後には半減したといわれています。

我が国では1979年に兵庫県立西宮病院と西宮市消防本部との共同運用で始まったドクターカーを皮切りに、1980年代後半から地域や病院単位でのドクターカー的運用が開始され、1991年に厚生労働事業の一環となって以降、大きな拡がりを見せています。1995年に阪神・淡路大震災の教訓から発した災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)の整備拡大に伴い、局所災害のみならず、東日本大震災や熊本地震などの広域災害においてもドクターカーやドクターヘリシステムの運用体制構築がなされつつあります。

当院では2021年11月より太田市からの要請を受け、太田市消防本部と連携してドクターカーの運用を開始しました。出動範囲は太田地域全域であり、救急科の医師と看護師1名ずつと太田市消防本部の職員3名が救急車に乗車して出動しています。なお、ドクターカーには救急科の医師7名と看護師4名が交代で乗務しています。

ドクターカーの運用について

ドクターカーは、市民の皆様からの要請は受け付けておらず、消防からの要請により、出動しています。ドクターカーの出動要請は消防本部から行われますが、迅速な要請のためには119番通報時点で、通信指令員にドクターカー要請の適否を判断してもらわなければなりません。そのため、迅速なドクターカー出動要請を実施できるように、キーワード方式によるドクターカー要請システムを取り入れています。結果的に軽症であってもかまわないというオーバートリアージを許容することで積極的な出動を可能としています。

オーバートリアージ:トリアージをする際に適切な基準よりも高い判断をすること。例として本当は黄・緑なのに赤タグと判断すること。

ドクターカー出動過程
消防本部が119番通報を受けて、以下の要請基準に該当するかを確認し、ドクターカー出動の判断を行っています。
  1. ①生命の危険に迫るもの心肺停止症例やそれに準ずるもの
  2. ②重症傷病者で搬送までに長時間を要するもの(交通事故などで搬出困難の時など)
  3. ③脳卒中や心筋伷塞、大動脈解離、アナフィラキシー、痙攣発作など、治療開始までの迅速な初期治療が必要なもの
  4. ④災害や、交通事故などで多数傷病者が発生した時
  5. ⑤その他、総合的に判断し、要請が必要と思われた時

前述したキーワードとしては、

  • ・急に倒れた、会話ができない、物音を聞いて倒れていた
  • ・呼びかけに開眼しない
  • ・突然の胸部痛、背部痛を訴える
  • ・突然の激しい頭痛を訴える
  • ・苦しくて会話ができない
  • ・冷や汗をかいている、顔色不良
  • ・大量の吐血や下血
  • ・窒息
  • ・痙攣の持続
  • ・重症外傷(重症熱傷、四肢切断、胸腹部刺創、高所転落、車外放出、跳ね飛ばされた、高度な車両変形、身体が挟まれた、巻き込まれた、胸部打撲による呼吸困難など)

などを取り決めとして、救急入電時、上記のキーワードがあれば、ドクターカー出動を積極的に考慮しています。

ドクターカーの運用実績

2021年11月の運用開始から2022年6月までの7カ月間のうち、延べ63日間の運用を行いました。出動件数は75件で、1日の平均出動件数は1、2件程度となっております。疾患区分としては、心肺停止、脳卒中、心筋梗塞、心不全、痙攣、重症外傷などで、そのうちの80%以上が入院となっています。
現在は週に2、3回程度、午前9時00分から午後5時15分の運用となっています。将来的には運用日、運用時間の拡大を検討しています。

ドクターカーで対応したすべての症例については、2か月に1回の頻度で、太田市消防本部と共に検証会を開催して振り返りを行っています。ドクターカーの目的である救命率の向上と、後遺症の軽減につながるよう話し合いを重ね、連携の強化を行っています。

ドッキングについて

患者様の状態によっては、救急車内だけではなく、患者様のご自宅や、施設内、屋外で診療を行う場合があります。また、病院に向かう途中の救急車とドクターカーが落ち合うことを“ドッキング”と呼び、救急車とドクターカーが、安全にドッキングするために、ある程度広くてお互いに分かりやすい場所―例えば、消防署、コンビニ、スーパーの駐車場やガソリンスタンド、公園や行政センターなどの主に公共施設の駐車場などでドッキングする場合があります。地域の皆様には、ご迷惑をおかけしてしまうことが予想されますが、ご協力をいただければ幸いです。

今後も太田記念病院スタッフ一同、太田地域の医療に貢献できるよう、日々精進していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

一覧に戻る