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SUBARU健康保険組合 太田記念病院

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口腔ケアで体を守ろう

近年全身の病気と口の中(口腔)の健康状態の関係について、より注目が集まっています。どの年代でも、口腔の健康を保つことは体の健康に繋がります。

近年口腔ケアの重要性が再認識されています

むし歯や歯周病が多い状態、口の中に細菌が多い状態は、動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病や早産、低体重児出産、誤燕性肺炎などと関係していることがわかってきました。今までは医学と歯学が別のものと捉えられていましたが、近年の研究により、口の中の細菌が全身に影響を及ぼしたり、全身性の病気が口の中に影響を及ぼしたり、相互に関係があることが分かり、様々な病気の治療法の研究が進められています。

また、食事でよく食べこぼすようになった、硬いものが噛めなくなった、むせることが増えた、口の中が渇く、と言った症状やありませんか?これらの口腔(オーラル)機能の軽微な低下を、身体の衰え(フレイル)の一つととらえて、オーラルフレイルと呼ばれるようになり、初期の老化のサインであると言われています。

なかなか自覚しにくいかもしれませんが、これらを放置しておくと噛む力、飲み込む力が弱くなり、滑舌も悪くなってきます。そうすると、栄養が偏ったり、人と食事するのが億劫になったりする可能性があります。

幼少期からの口腔ケア大事

ヒトは生後半年頃から歯が生えていき、ものを噛む力、飲み込む力が発達し、顔の表情が豊かになったり、脳の機能(記憶力・集中力など)を高め、生きる力を身につけていきます。また歯を磨くという行為がはじまり、口腔内を清潔に保つことで、健全な食生活を送ることができます。老いは避けられないものですが、このことを十分に理解し、どの年代でも口腔ケアを定期的に行い、病気を予防し豊かな人生を送りましょう。

オーラルフレイルの問診票
歯科口腔外科 伊澤先生に聞きました!
Q1 病気の治療前に虫歯や歯周病等の確認がある場合があります。どうしてですか?

A.口腔レンサ球菌は口腔常在菌叢において最も優勢な細菌群です。
口腔バイオフィルムである歯垢を形成し、う蝕の原因や、歯周病原性細菌の定着の足がかりになります。歯周炎が進行すると歯科的治療に限らず、食事や歯磨きの度に口腔常在菌は繰り返し歯肉の血管内に侵入し、感染性心内膜炎や歯性病巣感染など口腔以外の領域で発症する感染症の原因菌となります。また、誤嚥性肺炎の原因菌としても注目されています。
がん、臓器移植、心臓外科手術や整形外科手術の施行前後に口腔環境を整えることで、肺炎や創感染などの合併症を少なくし在院日数の短縮につながるといわれています。また、抗がん剤の中には口腔粘膜炎を起こす頻度の高いものがあり、投与前後の口腔ケアの介入で、症状の軽減につながることがあります。

歯科口腔外科 部長 伊澤和三(いざわかずみ)

歯科口腔外科 部長
部長 伊澤 和三

  • ※バイオフィルム
    自然界にもあらゆる場所に存在します(風呂場のぬめりや川の中の石のヌルヌル)。厳しい環境下でも生息し生き残るために身に着けた微生物の能力で、様々な種類の微生物が付着・凝集しフィルム状に表面に形成されます。抗菌薬・消毒薬に抵抗性を有し、バイオフィルム内で長期に微生物が生息できるようになります。
Q2 なぜオーラルフレイルという言葉が注目を集めるようになったのでしょうか。

A.フレイルとは、海外の老年医学の分野で使用されている「Frailty(フレイルティ):虚弱」の日本語訳です。フレイルは加齢に伴う様々な機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態で、日常生活機能障害・施設入所・入院をはじめとする健康障害を認めます。
日本での大規模研究から、フレイルに至る前段階のプレフレイルの状態に、わずかなむせや食べこぼし、滑舌の低下といった口腔機能が低下した状態があることが分かりました。その段階をオーラルフレイルといい、国民の啓発に用いる用語(キャッチフレーズ)として使われるようになりました。

Q3 オーラルフレイルは予防できるのでしょうか。

A.現時点でオーラルフレイルの概念が確定していません。なぜなら近年知ることができた新しい知見であるからで、その明確なスクリーニングやアルゴリズムは確立されていません。
オーラルフレイルの状態の疾患名は口腔機能低下症といいますが、その両者はほぼ同義と考えてよいでしょう。
口腔機能低下症の診断基準には口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力、口唇の運動力、舌の圧力、咀嚼機能、嚥下機能の項目があります。この7項目の機能低下を極力少なくすることが必要です。

Q4 口腔内の健康を保つためのポイントを教えてください。

A.歯の色が変色した、歯が欠けたなど、ちょっとした変化で他の人と顔をあわせることが出来なくなったり、引きこもりがちになることがあります。自身で口腔環境の変化に気づいた段階で、早めにかかりつけ医を受診し機能的・審美的回復を図ることで口腔機能低下を未然に防ぐことが出来ます。口腔への関心度の低下から精神・心理的な意欲低下、うつ傾向を経て、サルコペニアやロコモティブシンドロームさらに栄養障害へ段階が移行することがいわれています。小さな変化を見逃さず、放置しないようにすることが大切です。

今日から実践できる!口腔ケア!

日本口腔ケア学会認定 歯科衛生士
石井 英美

歯ブラシ歯磨き粉の選び方

患者様にお勧めする標準的な歯ブラシとして、
①柄が真っ直ぐ
②毛の硬さはふつう
③植毛部の面積の小さいもの
④口腔内で小回りが利くもの、
が挙げられます。
しかし歯並びや口の大きさ、歯肉の状態などによりそれぞれ適する歯ブラシは異なります。
これで良いのかな、と迷ったらぜひかかりつけ歯科でご相談下さい。また効率的にプラークを落とすために、歯ブラシの毛先が開いていなくても1カ月に1本を目安に交換しましょう。
歯磨き粉は正しいブラッシングとセットで初めて、むし歯や歯周病の予防・抑制、口臭除去などの清掃効果を発揮します。現在、市販の歯磨き粉の90%以上に薬用成分が配合されています。
自分の症状に合った歯磨き粉とブラッシングでしっかりホームケアをしましょう。

正しい歯の磨き方

毛先を歯と歯肉の境目や歯と歯の間にしっかりあてる、150~200gの軽い力(毛先が広がらない程度)で磨く、それぞれの歯の形態に合わせて、1歯ずつ歯ブラシを小刻みに動かす。
ポイントはこの3つです。しかし口腔内の状況は千差万別です。歯ブラシ同様かかりつけ歯科でオーダーメイドのブラッシング方法を教わることをお勧めします。

簡単なお口の体操 パタカラ体操

パタカラ体操は食べ物を上手に喉の奥まで運ぶ一連の動作を鍛えるための発音による運動です。加齢に伴い筋肉が弱ってくるとお口の周りの筋肉や舌の動きが悪くなります。
その予防、改善が目的です。パタカラ体操に取り組んでいつまでもおいしく食事を摂りましょう。

パ:唇をしっかりと閉めて発音することで唇を閉める筋肉を鍛え、食べ物を口からこぼさないようにすることができます。
タ:舌を上顎につけて発音することで舌の筋肉を鍛え、食べ物を押しつぶしたり、飲み込みがしやすくなります。
カ:喉の奥に力を入れて喉を閉じることで発音します。食べ物を飲み込み、食道へ送るには一瞬呼吸を止めることが必要となります。「カ」の発音は誤嚥予防のトレーニングとなり、食べ物を食道へ送り込みやすくなります。
ラ:舌を丸め、舌尖を上の前歯(裏)につけて発音することで舌を多く動かすトレーニングとなります。これにより食べ物を喉の奥へと運びやすくなり、飲み込みを助けます。

パタカラ体操
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