医療安全管理に関する考え方と組織
医療安全に関する基本的考え方
病院において患者様の安全を確保することは、安全で安心、質の良い医療を提供することが基本です。
安全で安心の医療組織を構築するためには、アクシデントやインシデントについて情報の分析、対応、評価を行い、検討した対策を恒常的に遂行することにより、医療に関わる事故の発生を抑制することが可能となります。
Heinrichの法則にあるように1件の事故の背後には29件の軽い事故があるといわれ、事故に至らなくても同じ事象は300件といわれています。1:29:300の例は1件の医療事故は同じ問題が生じる危険因子が組織の中、一人一人の中に存在していることを示唆していることであることを理解しなくてはなりません。医療事故はいつどこでも起こりえるものとして、当事者の責任や改善を追及するのではなく、事象の発生した状況を十分に分析し、結果を病院に働くあらゆる種の人達に周知させること、必要な情報と認識を共有すること、安全医療に対する教育の遂行が大切です。
安全管理や事故防止対策の充実は患者様に安全で安心の質の高い医療を提供するための基本事項です。
患者様が安心して診療を受けることの出来る体制や機構に関わるのは職員である「わたし」なのです。
基本方針
- 医療事故は常に身近に起こりえるものとして危機意識を持つ
- どのようなときも患者様の安全を最優先として医療を提供する
- マニュアルに沿った確認と実行。指差呼称は確認のための有効な行為
- 患者様や家族には十分に説明し内容が十分理解されるよう心がけ医療に参加してもらう
- インシデントアクシデントは、速やかに報告しやすい環境の整備と、個人の責任を追及するのではなく情報収集、分析対策実施評価を行い一連のシステムで構築し、共有化を図る
- 自らの健康や生活を管理することは自らの責任であることを認識する
- 最新の情報の入手と実践的な教育、研修を定期的に実施する
- 職場内では職種の違い、職制の上下関係を問わずお互いに指摘し協力できる職場風土が大切である
- 職場内の整理整頓清掃を心がける
- 組織全体で医療事故防止に向け組織的、系統的な管理体制を構築する努力をする
- 安全文化の醸成に心がけ医療の質の向上に寄与する
安全管理の組織に関する基本的事項
1. 医療安全管理部
1. 役割
医療安全管理部は医療安全委員会、院内感染対策委員会において決定された方針に基づき、病院全体の組織としての壁を越え、医療の質の向上、安全で安心な医療の提供、安全確保のための必要な決定を行い、これを実行し現場において積極的な取り組みが行われるよう活動する。
2. 構成
責任者:部長(医師兼任)、担当部長(医師専任)
安全担当:医療安全管理者(GRM)(専従)、事務(専従)
感染担当:感染対策課長(兼任)、感染対策担当者(ICN専従)、薬剤師(ICD専従)
3. 業務
- 医療安全委員会の運営支援
- 医療安全委員会の資料及び議事録の作成
- 組織横断的改善策立案
- 医療安全委員会への検討事項提起
- 医療日常安全活動
- インシデント、アクシデントの集計分析ならびに当該リスクマネージャーへの検討依頼
- 各部門に対する院内ラウンド・マニュアル等の遵守状況の確認、書類等の調査、指導
- 改善実施のための各部門への依頼と調整、改善後の評価
- 安全関係会議の企画、運営
- 安全マニュアルの作成及び見直し等の整備
- 安全管理に関する教育・研修
- 安全管理に関する教育・研修の企画運営および評価
- 安全管理に関する広報活動
- 医療事故及び苦情等の対応
- 事故発生時の部門への対応方法の助言、関連部門への対応依頼
- 安全に関する苦情や相談に対応
- 医事紛争の対応
- 医療安全特別会議の招集
- 予期せぬ死亡(死産)発生時の対応及び院内事故調査委員会の事務局
- その他
- 医療安全対策の推進に関すること
2. 医療安全特別会議
1. 役割
医療事故及び医療紛争が発生した場合、医療事故内容を調査するとともに、病院としてすみやかな対応を図り早期に解決することを目的とする。
2. 構成
病院長、副院長、医療安全管理部長、医療安全管理担当部長、医療安全管理者(GRM)、院長補佐、看護部長、事務部長、総務課長、必要部署長
3. 業務
- 事故発生時の機序原因調査を行い明らかにする
- 再発防止の観点から事故原因を分析し改善策を立案する
- 必要な対応策を各関連部門に連絡する
- 公表に関する決定を行う
4. 会議の開催条件
- 患者に障害後遺症を与え(レベル3b以上)、あるいは死亡させた場合の医療事故
- 所轄部署の警察に届出公表を必要とした場合
- 患者家族から医療行為に関してクレームが発生した場合
- 委員長が必要とした場合
3. 院内事故調査委員会
1. 目的
院内事故調査委員会は、当院において発生した医療事故に関する臨床経過の把握、原因の追及、再発防止策の提言を行う事を目的とする。なお、個人の責任を追及するものではない。
2. 構成
- 院外の医療の専門家(外部委員) 若干名
- 院外の有識者(外部委員) 1名
- 院内の対象事例に関与する診療科を除く関連領域の専門家 若干名
- 院内医療事故調査委員長 1名
- 医療安全委員会委員長 1名
- その他病院長が必要と認めた者 1名
- 医療安全管理部部長 1名
- 医療安全管理部担当部長 1名
- 医療安全管理者 1名
※他は院内事故調査委員会の規程による
4. 医療安全委員会
1. 役割
医療安全委員会は医療安全管理部と協力し、他の委員会との連携を密にし安全全般にわたる方針の決定や安全対策の審議など病院全般、また各部門における医療安全の対策の推進を図る。
2. 構成
委員長:医療安全管理部長、病院長、副院長:オブザーバー1名、医師5名、研修医1名、院長補佐、看護部長、事務部副部長、医療安全管理担当部長、医療安全管理者、医療機器安全管理責任者、医薬品安全管理責任者、医療放射線安全管理責任者、安全管理担当師長4名、感染管理認定看護師、各部門より課長を含むRM1~2名
3. 業務
- 委員会は毎月1回の定例会議を行い、医療安全管理部からのインシデントアクシデントの報告を受け現状の把握をすると共に医療安全管理部からの改善案や病院全体の改善すべき問題点などについて審議、承認を行う
- 改善策を委員会から各部門に周知徹底させる
- 他の委員会からの提言を受け病院全体の安全管理を総括する
- 医療事故発生防止のための啓発、教育、広報活動を行う
- 各RMからの提言、及び意見交換を行うことで全体の連携を図る
- 安全教育に対しての企画運営に参画する
5. 医療安全カンファレンス
1. 目的
タイムリーに、アクシデント・重大インシデントについての情報共有を行い具体的な安全対策を検討、対策を遂行する。
2. 構成
医療安全管理部長、医療安全管理担当部長、医療安全管理者、医療機器安全管理責任者、医薬品安全管理責任者、医療放射線安全管理責任者、臨床検査部副部長、画像診断部副部長、リハビリ部課長、栄養部課長
3. 業務
インシデント報告内容で早急に検討が必要なもの。システムや組織的問題等、患者安全が脅かされる諸問題について情報共有、原因分析、対策立案し、再発防止への取り組みを行う。また、実施した対策の評価や改善提案の検討を行い、周知が必要なものについては安全ニュースや委員会で啓発を行う。
6. リスクマネージャー会議
1. 役割
各部門内および横断的なインシデントアクシデント情報の詳細情報を把握し、具体的な安全対策を考え提言し部門における安全対策を遂行する。また、医療安全管理部と密接な関連を持ち、現場への安全対策を周知徹底などの活動を行う。
2. 構成
診療部:委員長1名、委員10名
看護部:各部署1名、安全担当師長5名
技師、事務部:各部署代表者1名
3. 業務
- リスクマネージャー会議は月1回定例会を開催し、必要時には他部門のリスクマネージャーの参加を依頼する
- 病棟をはじめ院内の各部署に定期的にラウンドを行い安全対策の実施状況の把握と評価改善指導を行なう
- 医療安全管理部へ改善策、検討事項の提言
- RM間での連携と協力を行うと共に共有化を図る
7. リスクマネージャー
1. 役割・業務
- 医療安全マニュアルの周知徹底
- インシデントアクシデントの報告書提出の励行
- インシデントアクシデント報告の収集分析された情報や改善策を自分の現場に伝達し実施し指導評価を行う
- マスコミで報道された内容に関してもスタッフに周知徹底を行う
- RM間の連携
- 研修、教育への参加と支援
安全管理のための職員研修に関する基本的事項
目的
安全管理のための教育・研修は、基本的な考え方、事故防止の具体的な手法等を全ての職員に周知徹底することを通じて、職員個々の安全意識の向上を図るとともに、当院全体の医療安全を向上させることを目的とする。
具体的内容
教育・研修は、医療安全管理部が具体的な立案・実践を行う。
- 全職員を対象に、病院組織全体で安全管理に取り組み、医療事故を防止することができるように、年2回以上の研修会・講習会を実施する
- 部署単位、職種単位等でも定期的な研修会を実施し、特性に即したより具体的な安全管理教育を実施する
医療安全組織図
