膵腫瘍に対する超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)後の 穿刺経路腫瘍細胞播種(Needle tract seeding)の前向き全国調査
膵腫瘍に対し超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)を施行した際、その穿刺経路に腫瘍細胞播種(Needle tract seeding)を来す可能性が報告されています。本来であれば長期予後が期待できる膵腫瘍切除症例においてNeedle tract seedingが顕在化することが問題となっていますい。日本膵臓学会では、「膵腫瘍に対する超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)後の穿刺経路腫瘍細胞播種(Needle tract seeding:NTS)の後ろ向き全国調査」を実施し、EUS-FNA後のNeedle tract seedingの発生率および予後を検討し、Needle tract seedingの発生率が0.330%であることが判明しました。しかしながら後ろ向き調査であることより、データ収集に限界があり評価困難な検討項目が存在することも判明しました。
そこで、この後ろ向き調査で得られた結果を基にして前向き全国調査を実施し、より詳細な検討を実施したうえで、後ろ向き調査で得られなかったNeedle tract seedingの年間発生率を検討すること及び発生要因および予後規定因子を解明することを目的とします。
当院にて膵悪性腫瘍を疑う腫瘍に対して、経胃的なEUS-FNAを実施したうえで外科切除、あるいは術前補助化学療法後に外科切除を予定している症例を対象とします。
研究参加施設において対象症例に対し、EDC(電子的に臨床データを収集するシステム)上で登録を実施します。患者背景・EUS-FNA関連の情報・外科治療・補助療法関連の情報・Needle tract seeding(NTS)発生の有無・患者の予後をEDC上で入力します。最終症例登録時から2年後までの観察期間の間に、NTSが発生したかどうかの有無を前向きに観察を行います。NTSの評価は切除時の病理標本および観察期間における臨床的な各種画像検査を用いて行います。
本調査におきましては、対象となる患者様の医療情報(受診日時、行為の日時・手段・場所・行為時の状況、受診時の身体的状況・治療後の状況等)を参考に調査いたします。したがって患者様に新たにご負担をおかけする事はありません。
被験者登録期間は2023年2月13日から2025年12月31日です。
研究実施期間は2023年2月13日から2028年6月30日です。
EUS-FNA後の正確なNeedle tract seedingの発生率およびその予後が判明すれば、膵腫瘍患者のなかでEUS-FNAを推奨するべき対象と推奨するべきでない対象が確定します。そのため膵癌診療ガイドラインに反映できる可能性があり、インフォームド・コンセントにも有用となります。
またNeedle tract seedingの発生要因および予後規定因子が判明すれば、その予防策を講ずることが可能となり、その発生頻度の低下および発生後の予後改善に寄与する可能性があります。
本研究は通常の保険診療の範囲内で行われるため、本研究に係る被験者に対する追加の費用負担はありません。
本研究は前向き観察研究であり、被験者に対する報奨はありません。しかし本研究は世界的にも初めての試みであり、本研究から得られたデータは世界的に価値の高いものになる可能性があります。
可能性のある不利益ですが、本研究は侵襲及び介入を伴わない前向き症例登録であるため、本研究参加に伴って予想される有害事象はありません。
本研究では患者様の診療記録からデータ収集を行うため、患者様のプライバシー保護に最大限の注意をはらいます。研究成果や学会発表・論文へ投稿をする場合も、個人を特定できないよう匿名化致します。本研究にご自身のデータ使用を望まれない場合、研究対象といたしませんので患者様もしくは代理人の方よりお申し出ください。不使用を望まれた場合でも患者様に不利益が生ずる事は一切ございません。
質問のある方は下記連絡先までご連絡お願いします。
SUBARU健康保険組合 太田記念病院
消化器内科 部長 伊島 正志
TEL 0276-55-2200
研究代表者:
和歌山県立医科大学 内科学第二講座 教授
北野 雅之